マカオ反離保運動 ― 「親密圏」における政治的抗議
2014年のマカオで起きた反離保運動は、政府高官に対する高額な退職手当や刑事免責に反対する市民の抗議運動であった。この街頭政治行動をマカオの治安部隊は積極的に規制せず、政府も市民が反対する法案を撤回して収束した。その歴史的背景として、マカオの治安部隊が政治的対立から距離をおく構造が定着してきたことがあげられる。マカオという小さなコミュニティーがある種の「親密圏」を形成することによって、政治的抗議が平和裏におこなわれる「伝統」がその基盤となっている。pp85-97
アジア政経学会『アジア研究』第63巻第1号