北極域の諸社会が気候変動に対する物理的適応を求められているだけでなく、工業社会との経済的な結びつきによって生業活動が大きく影響されるような事例が頻出している。現代の生業活動においては、賃金労働による現金獲得も同じく重要度を増している。工業社会との関係をうまく調整しながら、変動する環境のなかでいかに自律性を保って生きるかが、人間の活動が地球環境の全体に影馨を与えるようになった人新世において、北極域の人々が共通して抱える課題であり、非北極圏の経済大国である日本が北極域の諸社会への貢献を望むのであれば、彼らのニーズを深いレベルで把握することが必須となる。