アラスカの内陸部で狩猟漁撈採集文化を維持する先住民社会が、石油開発や環境汚染問題にいかなる対応をしているのか、事例を挙げて論じた。とくに石油開発問題に対しては、一見賛否が分かれているように見えるが、内実は「生活主体として自己決定権を確保する」という根本のところで共通した理念を持った対応であること、直面した問題を国際問題化する戦略が多く用いられていること、環境改善活動の途上ではこれまでつながりの薄かった他の先住民社会と協働する動きが見られ、その紐帯として「伝統」が用いられていること、などを指摘した。