【目的】ブラジル産プロポリスが培養細胞を用いた予備的実験創傷系において、治癒を促進する効果が認められた。本研究では、プロポリス受傷応答の際の遺伝子発現の調節する可能性を検討するため、トランスレートー厶(3個以上のリボソームが結合したmRNAのDNAアレイを用いた網羅的)解析を行った。
【方法】ヒトケラチノサイトHaCaT細胞をコンフルエントまで培養した後にプラスチック製櫛により剥離を作成し、その後1時間までブラジル産プロポリス(10μg/ml)あるいはPBSで処理し、受傷6時間に細胞をcyclohexiamide(100μg/ml)の存在下で集めた。細胞の全mRNAあるいは0.5M~1.5Mのショ糖密度勾配遠心法によりmRNA当たり3個以上のリボソームが結合したmRNAを抽出し、DNA マイクロアレイを用いたtraslatomeの網羅的解析を行った。その結果より当てはまるWiKiPathwaysを決定した。
【結果】プロポリス添加によりWiKiPathwaysのCytokines and Inflammatory Response、Oncostatin M Signaling Pathway、Hypertrophy Model、 Matrix Metalloproteinases 、ErbB Signaling Pathway に有意な変化が見られた。創傷治癒への関与が知られている遺伝子の中では、heparin-binding EGF-like growth factorおよびmatrix metallopeptidase 1 (interstitial collagenase)が、添加無しの3個以上のリボソームが結合したmRNA画分中で2倍以上に増加した。
【結論】ブラジル産プロポリスはヒトケラチノサイトHaCaT細胞を用いた実験創傷治癒系においてheparin-binding EGF-like growth factorおよびmatrix metallopeptidase 1 (interstitial collagenase)の両mRNAへのリボソーム結合の増加を介して、治癒を促進している可能性が示された。