【目的】温州ミカンに多く含まれるbeta-cryptoxanthin (BCP)は、beta-caroteneよりも体内貯留が長いため持続する抗酸化作用等が期待されているが、その生物作用の詳細は不明である。そこで、BCPがヒト単球系細胞の遺伝子発現へ及ぼす影響を網羅的に解析した。
【方法】LPSにより起炎したTHP-1細胞を遠心により集め、BCP(0.05%)または溶媒(0.1%DMSO)を添加したDMEM培地に再懸濁後培養した。3時間培養した細胞から3個以上のリボソームが結合したpolysomal mRNAsを調製し、マイクロアレイにより網羅的に解析した。次に、得られたデータについて、パスウエイデータベース解析を行った。
【結果】BCPは、BDNF signaling pathway、Regulation of Actin Cytoskeleton、ID signaling pathway、Focal Adhesion、IL-7 signaling pathway、Selenium MetabolismおよびSelenoproteinsの7系統を有意に活性化した。これらは主に、cofilin 1 (non-muscle)、BCL2-associated agonist of cell death、beta actin、dominant negative helix-loop-helix protein inhibitor of DNA binding 1およびselenoprotein Oの発現が促進されたことに因る。
【考察】BCPは、炎症反応に関連する遺伝子発現を調節する可能性が示された。