我々が作製した抗-ヒストンH1モノクローナル抗体C93-3は、α-actinin 1、α-actinin 4、nucleolin、hnRNP U、DNAといった様々な物質を抗原として認識する多反応性抗体であることがわかっている。C93-3はLPSによって誘導されたエンドトキシンショックからマウスを救命した。別の抗-ヒストンH1モノクローナル抗体はマウスを救命しなかったことから、C93-3の作用機序には、ヒストンH1以外の抗原が関与する可能性がある。C93-3が認識する抗原のうち、細胞外DNAは炎症反応を惹起する物質として知られる。また、nucleolinはマクロファージの細胞表面に存在し、LPSによる活性化に関与することが報告されている。今回、C93-3の作用機序における細胞外DNAおよびnucleolinの関与を調査した結果を報告する。
DNAに対する結合がC93-3と同程度の抗-DNA抗体をエンドトキシンショックマウスに腹腔内投与し、救命効果を評価した。その結果、LPS投与群およびコントロール抗体投与群と比較して、抗-DNA抗体投与群の生存率は有意に改善した。抗-DNA抗体投与群におけるLPS投与後48時間の生存率は16.8%で、C93-3投与群の生存率70%に遠く及ばなかった。この結果から、C93-3による細胞外DNAの捕捉は救命効果の一端を担う可能性はあるが、主な作用機序ではないことが示唆された。
C93-3がマウス腹腔マクロファージの細胞表面に結合することをフローサイトメトリーで確認した。C93-3は腹腔マクロファージの細胞表面タンパク質中のnucleolinに結合した。C93-3存在下において腹腔マクロファージをLPSで刺激したところ、活性化に伴う炎症性サイトカインIL-6、TNF-αの産生は抑制されなかった。これらの結果から、C93-3はnucleolinを介して腹腔マクロファージの細胞表面に結合する可能性はあるが、LPSによる腹腔マクロファージの活性化を抑制しないことが示された。
実験データの解析、考察