研究ノート:「ソクラテス」にとって「同意」とは何であったか―プラトンの物語的対話篇における間接話法による応答様式に関する一考察
『国家』篇のような物語的対話篇という文学様式は、『ソフィスト』のような戯曲形式の文学様式の便宜的な代替様式ではないこと、また、物語様式における間接話法による応答様式は、直接話法による応答様式の単なる便宜的な代替様式に留まらず、語られる過去の対話の外枠にある、語り手と聞き手との関係に依存したもので、聞き手に語り手の理解を伝えるものである。『プロタゴラス』、『エウテュデモス』においては、対話における「同意」の実質に関する問題を喚起させる働きをなすものである。
東京大学大学院人文社会系研究科西洋古典学研究室『東京大学西洋古典学研究室紀要』2(2006), pp. 27-44