Contraversive Pushingは、ADLを著しく低下させる因子となるため早期の改善が必要である。 pushingに対する治療は視覚的入力情報の利用が重視されているが、適切な運動課題のもと麻痺側下肢に荷重を積極的に促し非麻痺側下肢の再学習を行うことでpushingが改善することを経験する。今回, pushingを呈した片麻痺者2症例に対し、高座位からの立ち上がり及び立位アプローチの有用性について検討した。研究デザインは,シングルケーススタディABA法を用いた.A1期(ベースライン期),B期(介入期),A2(フォローアップ期)は各々5日とし,各期で抗重力位を基本とした一般的な理学療法を一時間行い,B期のみ高座位からの立ち上がり及び立位アプローチを実施した。座面の高さは立ち上がり時にpushingが最小限となるように高さを調節し、介助を行う際は足底が浮かないように注意した。立位アプローチは,長下肢装具を使用し膝関節を固定,昇降ベッドを非麻痺側前腕で支持し、非麻痺下肢が突っ張らない範囲で左右に体重移動を実施した.評価時期はA1期の前(以下,A1),B期の前(以下,B前),B期の後(以下,B後)、A2期の後(以下,A2)としScale for Contraversive PushingとTrunk Control testを評価した。pushingに対し高座位からの立ち上がり及び立位アプローチ介入期においてScale for Contraversive Pushing及びTrunk Control testの改善を認めA2期においても効果が持続した。これらは立ち上がりにおける課題難易度を調整し積極的に麻痺側からの荷重を促し、体性感覚を適切にフィードバックしたことで予測的姿勢制御の強化に寄与し、非麻痺側下肢が再学習したことによってpushingが改善したと推察した。今後はpushing重症度別の効果,適応と限界について症例数を増やし検証していく必要がある。