本研究は,精神疾患の母親をもつ子ども(以下,子ども)たちの語りから,子
どもたちが子ども時代の困難をどのように乗り越えてきたのか,その経験が彼
らの人生にどのように影響し,母親との関係をどのように捉え直しているのか
を明らかにすることを目的とした.成人した
4 名の子どもを対象に,ライフス
トーリー研究法を用いて,彼らの経験の語りを分析・解釈を行った.
子ども時代,子どもたちは心に蓋をし,その瞬間を生きてきた.大人になると
その経験は孤立感やトラウマ等の生きづらさとなった.
彼らは仲間と出逢うことで孤立感から解放され,自己を語ることや,仲間や自
身の子との関わりを通して自分の人生や母親との関係を捉え直していた.
子どもたちの成人後の生きづらさからの回復には,仲間と出逢い自己を語るこ
とが必要であり,支援者はその環境を整え,子どもたちの伴走者として共に歩
み,家族全体を視野に入れた支援の重要性が示唆された.
(発表者)伊賀聡子・横山惠子・森正樹・森田牧子