明治時代にウィリアム・ジョージ・アストン(William George Aston)が、明治時代から現代までどのように評価され、研究されたかを考察した。アストンは、日本語の文法研究史上で評価されているが、指示詞の研究史でも重要である。そこで、アストンの記述を指示詞の研究史上に位置付けるための作業の一段階として、本稿ではアストンの評価と文典の研究について述べることにした。その結果、現代では記述言語学的な内容のみ高く評価されるのに対し、20世紀初頭までは比較言語学についての業績も同様に重視されていたことが明らかになった。また、代名詞・指示詞の記述については、口語文典初版と第2版を考察の対象に入れながら指示詞の研究史に位置づける可能性があることが示唆された。