【目的】14員環マクロライドを少量長期投与するマクロライド療法は、びまん性汎細気管支炎に有効である。14員環マクロライド系抗生物質は、宿主に対して抗炎症作用を示すことが知られているが、細胞内標的の詳細は明らかでない。今回は炎症に関わる遺伝子のmRNAの転写後の細胞内動態に14員環マクロライドが及ぼす影響を検討するために、そのスプライシングに関与する因子、炎症性サイトカイン等のmRNAの3’ 非翻訳領域に存在するAU-rich element-containing (ARE)に結合する因子およびmicro RNAについて調べた。
【方法】ヒト肺腺腫細胞系A549細胞を、14員環マクロライドclarithromycin(CAM)、erythromycin(EMA)およびroxythromycin(RXM)添加の有無で48時間培養(150cm²)後、Dignamらの方法に従い・スプライシング装置を含む画分を、核より調整し、更にグリセロール密度勾配により分離後、9本のフラクションとして分取した。各フラクション中のタンパク質はSDS‐PAGEを行った。ARE結合タンパク質は、Western blot法により解析した。RNAの定量はRT-RT-PCR法を用いた。Micro RNA解析は、miRCURY LNATM Array microRNAに委託した。
【結果・考察】今回用いたCAM、EMA、RXMによりInterleukin 6、Tumor necrosis factor- およびcyclo-oxygenase 2のARE mRNAsは、発現が減少した。グリセロール密度勾配フラクション中でRXM処理により高分子画分において数種のバンドが減少していた。Western blotによりAREへの結合が知られるELAV like RNA binding protein HuR、tristetraprolin及びT-cell intracellular antigenの3種のタンパク質についてCAM、EMA、RXMにより細胞質での減少が観察された。mRNAの転写後の発現調節に関わるmicro RNAについては、CAMにより処理により1種が有意に増加し、15種が減少した。以上より、14員環マクロライドはmRNAの転写後からその結合タンパク質へ作用することで、mRNAの成熟やその安定性まで影響を及ぼしている可能性が考えられる。
29P1-am095