目的】良姜由来のdiarylheptanoidsは腫瘍細胞の増殖阻止作用、抗ウイルス作用並びに抗炎症作用が報告されているが、血液系細胞への影響の詳細は明らかでない。本研究では、B-リンパ球系細胞の遺伝子発現に及ぼす影響を検討するため、良姜由来のdiarylheptanoidsの添加によるトランスレートームの変化を網羅的に解析した。
【方法】B-リンパ球系細胞を良姜由来の3種のdiarylheptanoids(AO-0001、-0002、-0003)、curcumin及びrapamycin添加の有無で2時間培養後、細胞質を抽出し、更にショ糖密度勾配により分離後、9本のフラクションとして分取した。各フラクション中の全RNAを抽出後、網羅的にmRNA発現を解析した。その解析結果をもとに、Filgen社のGenMAPP Pathway解析を行った。
【結果・考察】Pathway解析の結果、① 3種のdiarylheptanoidsによりPathwayがそれぞれ7、4、10系統について有意に変化した。その内GPCRs Class A Rhodopsin-like及びmRNA Processingは、3種のdiarylheptanoidsに共通して有意な変化が認められた。このmRNA Processingに関係する遺伝子発現が最も多く調節を受けた。②Diarylheptanoidsのcurcuminは、Inflammatory Response、Androgen Receptor Signaling及びGPCRs Class A Rhodopsin-likeに、一方、長寿効果が知られるmacrolideのrapamycinはStriated Muscle Contractiol、Focal Adhesion及びDiurnally Regulated Genes with Circadian Orthologs、Senescence and Autophagyに対して有意に影響を及ぼした。③ 3種のdiarylheptanoidsとcurcuminはGPCRs Class A Rhodopsin-likeに影響を及ぼし、AO-0001とrapamycinは、Diurnally Regulated Genes with Circadian Orthologsに影響を及ぼした。
以上、今回使用した良姜由来のdiarylheptanoidsは、curcumin及びrapamycinが発現調節能を示したB-リンパ球系細胞の遺伝子の過半数に対して同様の調節作用を示したことから、curcumin及びrapamycinの薬理作用を併せ持つ可能性が示唆された。
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