【目的】現在日本では危険ドラッグの乱用による事件事故の発生増加が社会問題となっている。脱法ドラッグの使用を減らすためには、中毒作用の検出の高速化が求められている。一方、Translatome解析は、リボソームに結合したmRNAを網羅的に解析する手法で、遺伝子発現の増減1)特に炎症関連遺伝子を解析するのに適している2)。本研究では、迅速に類縁化合物の構造活性相関を検出する目的で、対象薬としてmorphineおよびoxycodon、危険ドラッグとしてJWH-018およびJWH-122についてtranslatome解析の応用性を検討した。
【方法】ヒト急性単球性白血病由来THP-1細胞 (107個)を20 μMの薬物で2時間処理し、mRNAあたり3個以上のリボソームが結合しているmRNAについてDNAマイクロアレイによる網羅的解析し、全RNAに対する割合が「2倍以上/半分以下」に変化した遺伝子を検出した。
【結果】変化した遺伝子はmorphine「2,844/2,819」、oxycodon「2,620/3,166」、JWH-018「1,853/1,116」およびJWH-122「2,687/3,080」であり、どの化合物も全遺伝子の1割程度と強い生物作用が確認された。Morphineおよびoxycodonと挙動が共通した遺伝子はJWH-018「645/667」に対してJWH-122は「2,401/2,411」であったことから、JWH-018は他の3種と生物作用が異なる可能性が示された。
【結論】培養細胞を用いたTranslatome解析は、薬物の生物作用を詳細に検出する手法として、動物実験に比べて安価、迅速な利点があり、さらに、データを蓄積することが重要であること、およびその応用性の可能性が示された。
1) Proc Natl Acad Sci UA. 96:10632-10636 (1999)
2)Bioinformatics 15:289-291 (2014)