【目的】アクチノマイシンDは、DNAに結合し遺伝子発現を阻害する。この作用機序の詳細を解明するために、実験創傷における治癒過程の遺伝子発現を網羅に解析した。
【方法】コンフルエント状態のヒトケラチノサイト細胞(HaCaT)をプラスチック製櫛により帯状に剥離し、その後1時間までアクチノマイシンD存在または非存在下で培養し、受傷6時間後に細胞を集めた。細胞から調製した全mRNA(転写)およびmRNA当たり3個以上のリボソームが結合したmRNA(翻訳)を分画後に抽出し、DNAマイクロアレイによる網羅的解析を行った。次に、得られたデータについて、パスウエイデータベース解析を行った。
【結果】アクチノマイシンDは、①転写レベルでは有意(0.05 > P)に変化した WiKiPathwaysの系統はなかったが、②翻訳レベルではFluoropyrimidine Activity、Gastric cancer network 1 および2、RB in Cancer に加えCell Cycle、Cytokines and Inflammatory Response、DNA Replication、G1 to S cell cycle control、Class A Rhodopsin-like GPCRs、Matrix Metalloproteinases、miRNAs involved in DNA damage response の11系統で有意な変化が見られた。
【考察】アクチノマイシンDは、複製および転写の阻害作用に加え、翻訳レベルで、がんや細胞増殖並びに炎症反応に関連する遺伝子発現を選択的に調節する可能性が示された。
共同研究につき本人担当部分の抽出不可能