【目的】SSRIに分類されるFluoxetineは、神経保護作用を有することが示唆されているが、その機序の詳細は不明である。そこで、ラット海馬および培養神経系細胞における遺伝子発現に対するFluoxetineの影響を調べた。
【方法】Fluoxetineを0.2 g/L添加した飲水を11週間自由摂取させた雄性Wistar-Hannoverラット(日本クレア)の海馬を摘出あるいはFluoxetineでPC12神経芽細胞を3時間処理後に細胞を集めた。海馬または細胞からmRNA当たり3個以上のリボソームが結合したpolysomal mRNAsを抽出し、DNAマイクロアレイによる網羅的解析を行った。
【結果】Fluoxetineにより、海馬では35遺伝子mRNAへのリボソーム結合が2倍以上に増加し、20遺伝子で2分の1以下に低下した。PC12細胞では4遺伝子が増加し、11遺伝子で低下が見られた。これらの4つの遺伝子のグループ間で重複した遺伝子は無かった。
【考察】Fluoxetineにより発現調節された遺伝子にラット海馬とPC12細胞で重複が無かったことから、Fluoxetineによる遺伝子発現調節機序の詳細を明らかにするには、他の神経系の細胞についてFluoxetineの影響を解析し、比較することが重要と考える。