Deep eutectic solvents(DESs)(=深共晶溶媒)およびイオン液体は薬物、特に、生物製剤を経皮的および経口的に送達するためのプラットホームとして期待されている。この活性は、DESsやイオン液体が寄与するいくつかの要素、すなわち、タンパク質溶解性・タンパク質安定性・酵素阻害・上皮バリアー透過性向上によってもたらされると考えられる。本研究ではこれらの要素のいくつかが皮下投与を可能にすると仮説を立てた。この仮説を検証するため、天然グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)を種々濃度のCAGE(=DESsの一種)存在下で皮下投与した。天然GLP-1は、Dipeptidyl peptidase-4(DPP-4)の酵素的分解を受けて全身血流中で速やかに消失する。しかし、neatあるいは希釈したCAGEを用いて投与すると、生理食塩水で投与したときに比べて4倍のAUCを示した。このことは、全身血流中のペプチド濃度の著しい増加を示唆するものであった。メカニズム解析の結果から、CAGEはDPP-4の酵素的分解を抑制することが明らかとなるとともに、CAGEが自己凝集した結果、包摂したGLP-1を持続的に放出している可能性を示した。本研究結果は、補足の試験を行うことで、CAGEがGLP-1の薬物動態プロファイルを改善する添加剤となりえることを示している。
深共晶溶媒中におけるペプチドの構造変化に関する研究部分
p.1-3