実方説話の形成に関する一考察―雀転生譚を起点として―
お茶の水女子大学国語国文学会
王朝期の歌人藤原実方は、陸奥守就任の四年後に客死し、蔵人頭になれなかった無念さから雀に転生して帰京したと伝えられる。『今鏡』初見の本話について、西行や顕昭といった院政期の歌人を中心に、実方説話の形成と享受の過程を考察した。下野国の歌枕「室の八島」の配流地としてのイメージ形成や和歌における雀の詠まれ方などから、西行の陸奥旅行を契機として、実方が都の歌人たちに注目され、悲運の人として定着していったとした。