繁昌社の縁起伝承とその展開―『宇治拾遺物語』第四七話を起点として―
(37~46頁)京都市下京区高辻室町に存する繁昌社の縁起について、『宇治拾遺』四七話と近世の地誌類との隔たりに注目し、その変貌の背景について論じた。中世日本紀の一種に「婆利采女」が「ハリ女」「ハレ女」「ハン女」と記載されていることから、同社がもとが「婆利(采)女社」であった可能性を指摘した。さらにその後、婆利采女・牛頭天王夫婦が同様の性質を持つ毘沙門天・吉祥天夫婦と習合、それらの持つ福神の性質がクローズアップされ、繁昌社と改称したと考察した。
『説話文学研究』35