「舌切り雀」とその周辺-児童文学の素材へのアプローチ-
昔話のうち「舌切り雀」を中心に、雀の文学的コスモロジーを、時代を超えて概観した。中世の説話や御伽草子では、仏教性の強い物語の中で、心の迷いの象徴から、悟りを得るものとして登場する。近代文学では、北原白秋や太宰治に、雀が精神的故郷の世界を形成している様を見ることができる。児童の触れる文学(絵本・詩歌・童謡などを含む)に多く雀が見られるのは、小ささやかわいらしさもさることながら、素朴さ・率直さといった面が、より子どもの心性と共通しているためと思われるとした。
千葉敬愛短期大学紀要