【目的】本研究は、小学生児童の行動変容段階と栄養素等摂取量および社会的・心理的要因との関連性、また児童と保護者の行動変容段階間の関連性などを明らかにし、児童の食行動や栄養素摂取量に及ぼす影響を検討することを目的に行った。【方法】千葉県T市内の小学校1校に在籍する4~6年生児童185名とその保護者を対象に、食生活に関する調査を行った。保護者にも、同様に食生活に関する調査票への回答を依頼したが、本研究ではそのうち「健康的な食生活」に関する行動変容段階のみを活用した。児童における回収率は93.5%で、解析対象者は欠損値のない171名(92.4%)、保護者における解析対象者は137名(74.1%)とした。【結果】全児童における健康的な食生活に関する変容段階の分布は前熟考期5名(2.9%)、熟考期43名(25.1%)、準備期38名(22.2%)、実行期36名(21.1%)、維持期49名(28.7%)であり、前熟考期が5名と少ないため、以下の解析は前熟考期と熟考期を併せて解析を行った。その結果、多くの栄養素摂取量で前熟考期+熟考期は維持期に比べ有意な低値を示した。また適正な栄養素量を摂取している児童の割合においても、有意な差が見られるものは少なかったが、同様の傾向が見られた。また変容段階と心理的・社会的要因との間には食行動の恩恵、自己効力感、ソーシャルサポート、食品利用環境、親子の信頼関係で有意差が見られ、児童の行動変容段階に影響を及ぼすことが確認された。親子の変容段階の関係では、維持期における児童の半数以上で保護者の変容段階も維時期にあることが確認された。【結論・考察】児童における健康的な食生活に関する行動変容段階の妥当性が、栄養素等摂取量および適正栄養素摂取を基準関連尺度として確認された。また行動変容段階には社会的・心理的要因の影響を受けることが確認された。今回の結果から児童の「健康的な食生活」を実現するために、関連が確認された社会的・心理的要因を強化した支援が有効であると考えられる。しかし、対象校が1校で、標本数も少なく一般化が困難などの課題が残ったため、標本数の拡大、さらには個々の社会的・心理的要因の信頼性・妥当性の検討などを行っていく必要がある。