9世紀のプラトン著作中世ビザンツ写本Parisinus graecus 1807には、句読法上9世紀に初めて現われる「疑問符」と見なされてきた記号、すなわち、「:」や「・」という従来用いられていた区切り記号の下に「,」が付されている記号が記されているが、従来この「,」は、本文の筆写より後に別の手で付加されたものと考えられてきた。しかしながら、サンプルとして『国家』第1巻を中心に見てみると、の下に付される区切り記号の場合と同様、「:」の次に「,」を付すという通常考えられる、また、他写本で確認される順番ではなく、「,」の次に「:」を付している場合、すなわち、同一の手によって、本文の筆写と同時に疑問符が付されたと考えられる。また、疑問符は、文法上疑問文となる特性のあるところには逐一付されず、断定文とも疑問文とも取りうるところを中心に付され、その基準は、通常主張と考えられる箇所でさえ疑問と解釈する解釈が前提にあることを示唆するものである。