プラトンの教説と言い慣わされている事柄の典拠となる、いわゆる中期対話篇においても、対話編というものが、教説集とは異なるものであることを示す。とりわけ、プラトンの主要な学説とされる「魂の不死論」と言われるものが、少なくとも第一「証明」に絞って言えば、その「証明」とは、一人の話者のまとまった解説として提示されるものではなく、問答という対話当事者間の相互干渉的な応対のうちに属している対話当事者の理解のもとに現れるものである事を示し、またその「理解」が、後続の「証明」の前提となっていることを示唆する。そして、言うところの「証明」の説得性は、ソクラテスならぬ特定の対話相手が抱いている顕在的、潜在的信念と、特定の文脈におかれた対話の場により対話当事者に対して要求された要請との、二つの条件に基づくものであることを、テキストの読みを通して論ずる。