本稿は、プラトン著作集の偽作集に収められている作品、『徳について』について、その本文校訂を行うための基礎資料として、中世主要写本並びに派生本文写本に関する異読資料を提示するものである。なお本作品は、17世紀に、アイスキネスの著作として、三人の校訂者によって、出版されているけれども、これら17世紀校訂者が用いている写本が何であるかについては、特定するための明確な記述がなされていない。そこで、本研究では、これらの版本における序文の記述や、古い写本カタログ等の記述から使用された写本がプラトン著作写本のものであり、現在に伝わる写本中の中に同定した。また、その異読から、派生本文であることをも示した。
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