現代日本語「自然」、「人間」による、並びに現代印欧語各相当語による二項関係言明について、反省的局面においては、言語使用当事者間で一義的了解を共有することは体系的に困難であり、かつまた、言及される社会的集団成員間に相同性を仮定することは現実的に困難であるにもかかわらず、当該二項関係言明は必然的に無効とは言えず、集団的選択の有する社会的過程の諸条件を考量し当事者の自己意識における自己了解の前提を解明することにおいてはその有効性が残る。しかし、当該二項関係言明は歴史的に超越者を表す項を加えた三項関係言明の射影として成立してきた点で、二項関係言明の思考的枠組みは歴史的に相対的なものであり歴史を通じて汎通的な自明性を有するものではない。
26-7 (2018) 1-22