嚥下機能は、口唇、舌、咽頭、喉頭の筋群が関与し、嚥下中の気道防御のために嚥下と呼吸との間には密接な関係がある。一方、「発話」生成には、発話生成における空気力学的動力源の呼吸器系、与えられた空気流を音響エネルギーに変換して音源を作る喉頭、声門直上から口唇に至る声道(鼻咽腔、舌、下顎、口唇など)の筋群が関与する。このように構音と嚥下は末梢効果器官の多くが互いに重複しているため、「発話」による口腔構音器官の運動が嚥下における口腔準備および口腔期に影響する可能性がある。高齢者の肺炎の多くは、加齢ならびに廃用に伴う嚥下機能の低下による誤嚥性肺炎である。高齢者の日常の生活では会話が不足しており、口腔構音器官の運動の機会が減少している。そこで、本研究では受動的「発話」の嚥下機能に対する効果を検討する。高齢者にとって特殊な介入ではく、日常生活に取り入れやすい誤嚥予防援助モデルを考案するための基礎資料とする。受動的「発話」は、深部体温と甲状舌骨筋の温度を上昇させ、嚥下関連筋群を活性化させることが示唆された。