【目的】発声と嚥下に関わる器官は、呼吸器系と口腔など多くを重複していることから、発声による口腔構音器官の運動が、嚥下における口腔準備期および口腔期に影響する可能性がある。我々はこれまでに、受動的発話(朗読による単音節数7000個の発声)は嚥下機能関連筋群を活性化し嚥下時間を短縮させることを報告した。そこで本研究では、日常にある「発話」を活用した高齢者の誤嚥予防援助モデルを開発することを目指し、能動的発話(おしゃべり)が嚥下機能に与える効果を明らかにすることを目的とする。
1.対象:研究協力に同意の得られた地域在住の健康高齢者9名(70.7±3.4歳)。脳血管障害がなく、主観的に食事中にむせやのどのつかえのなく、体調の良いと答えた者。
2.調査期間:平成27年4月と6月の各月10日間。調査は1被験者一人2回、1ヵ月以上の間隔を空けて実施した。
3.測定項目と測定機器
(1)嚥下機能:①口腔粘膜湿潤度「口腔水分計ムーカス(株)ライフ」②舌圧「JMS舌圧測定器」③呼気筋力「 ピークフローメータ – アセス」④反復唾液嚥下テスト3回目積算時間(以下、嚥下時間)⑤オーラルディアドコキネシス(OD)は「健口くん(株)竹井機器工業」
(2)生理機能:①深部体温「連続測定型耳式体温計(CEサーモ、ニプロ)」、②血圧「ベッドサイドモニタ PVM-2703、日本光電)」
(3)単音節数:ICレコーダーに録音した発話をひらがなで逐語録にし、単音節数をカウントした。
4.介入方法
研究者は、1回目は20分間(以下、20分間発話)、2回目は30分間(以下、30分間発話)、被験者の能動的発話(昔語りによるおしゃべり)を促した。
5.測定方法
測定時間は15:00~16:30、室温は20~23℃の環境下で30分の座位安静を保持した。測定手順は、①安静後、生理機能と嚥下機能(上記の順序)の測定、②能動的発話を20分間または30分間、③生理機能と嚥下機能の測定、④安静20分間、⑤生理機能と嚥下機能の測定
6.分析方法
能動的発話の実施前と後及び安静度の差の検定には、Wilcoxonの符号順位和検定を行った。統計的有意水準はp<.05とし、統計解析はSPSS17.0J for Windowsを使用した。
7.倫理的配慮
研究の目的と内容、利益とリスク、個人情報の保護、および参加の拒否と撤回について、口頭と紙面によって説明を行った後、参加合意に対して自筆により署名を得た。城西国際大学看護学部倫理委員会の承諾(承認番号25-10)を得た。
実験 解析