本研究では、「法内施設」の就労支援が拡大する中、「法外施設」となった作業所を継続してきた運営者の語りから、作業所が存続し続けるために、運営者が運営にあたりどのような経験をしてきたのかを明らかにし、作業所の今後の存続の可能性と、昨今における精神障がい者にとっての作業所の存在意義を探索した。
作業所運営者の経験の語りを研究データとし、質的記述的研究法で分析した結果、運営者の経験として、【こころのケアを包含した生きるためのケアの提供】、【居場所の提供】、【作業所運営の継続による変化】、【運営上の困難とその対処】、【作業所存続へのこころの揺らぎ】、【作業所の良さを取り入れた新たな支援の必要性】の6カテゴリが生成された。
本研究によって、作業所は、利用者の症状に合わせた作業提供の他、利用者や家族へこころのケアを行っており、彼らが安心して社会と繋がれる場であることが明らかとなった。また、利用者は作業所に通うことで、「病気に前向きになった」「生き生きした姿になった」「自分の存在意義を感じ会話が増加した」等のプラスの変化がある一方、作業所の経済的困難や、法内施設への移行が困難である現状が明らかとなった。
これらから、精神障がい者を地域での生活を支えるため、作業所の良さを残した、新支援体制の構築の必要性が示唆された。
研究代表者:伊賀聡子、研究分担者:井上映子、森山拓也、島村龍治