手浴による自律神経反応および中枢神経反応を調べる目的で,対象者を交感神経優位群と副交感神経優位群に分けて検討した.自律神経反応は心拍変動解析により,中枢神経反応は近赤外分光法を用いた脳血行動態により前頭葉の活動を調べた.健常成人男女20 名を対象とし,38℃で分間の手浴実験および対照実験を行った.その結果,交感神経優位群では,手浴により交感神経活動が低下し,副交感神経活動が亢進した.また,主観的な気分の変化として,手浴によりリラックス感が上昇していた.一方,副交感神経優位群では,手浴により交感神経活動が亢進し,副交感神経活動は低下した.手浴による中枢神経系の反応として,副交感神経優位群では背外側前頭前野および前頭極の活動が亢進した.また,対照実験でみられた副交感神経優位群における活気の低下が,手浴により抑制されていた.以上のことから,手浴は中枢神経系を介して自律神経および主観的気分のバランスを整える可能性が考えられる.
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