Syllabus data

授業科目名
世界の文学
学年
1Grade
単位数
2.00Credits
実務経験の有無
開講クォーター
semester not specified
担当教員
Taki Akitsugu
授業形態
授業で主に使用する言語
日本語 (Japanese)
授業方法区分
開講キャンパス
Online
授業の到達目標及びテーマ
本講義は、文学作品専門研究を前提とせず、むしろ、全学問に通底する文学理解一般の基本前提を問う。具体的には、人類が文学を通して培ってきたものの本質を未来に開かれたものとしてその可能性を問い、広く学びや実践の場に活かすことをねらいとする。文学作品含む文字資料を対象としつつ、作品ジャンルの歴史的社会的諸条件を分析し、無文字、文字の両社会をつらぬき未来に及ぶ文学的創造力を人類的本性として考察する。

授業紹介ビデオ:
Webex ミーティングの録画: 「世界文学」 授業紹介
パスワード: GtCmBVg9
録画のリンク: https://jiu.webex.com/jiu/ldr.php?RCID=73644f5ca1f2dcf05ac1132dfe6b637c
授業の概要
①  科目名: 「世界文学」(英語名: World Literature)
②  形式: オンデマンド 講義 (オンデマンド授業として、13回、各回50分視聴ファイル2本が配信される。授業出席確認のため毎回(全13回)小論課題が課せられる。課題提出締め切りはおよそ1週間を目途とする。)
③  内容: 象徴の社会的交換としての言語の誕生において、人類は、相手の立場に置き換えて思考する相互置換可能性を基本的倫理性として自らに備えたばかりでなく、即時即物的事実性以上の相互交渉を行うことによって文学的創造力をも獲得したと仮定するならば、数万年に亘る現代にまで至る人類の文学的実践の発展において、現在、人類はいかなる文学的可能性に開かれているか、この問いを人類史の多様な文学的実践から問うことをこころみる。
④  授業回数: 13回
⑤  出席確認方法: 大学ポータルに提出される毎回の小論課題(なお、内容と質において大学の基礎教養の基準を満たすもののみを受理する)
⑥ 履修者への連絡及び教員への連絡方法: 大学ポータルを通じて行う(個人的なことについてはJIUメールで受け付ける)
⑦ 学生等と教員、或いは学生同士の意見交換の方法: 大学ポータルの掲示板
⑧ 設問解答・添削指導・質疑応答等による十分な指導: 毎回、受講者全員の提出物については、日本語並びに内容について講評を視聴ファイルのリンク先を通じて、フィードバックする。提出者の名前は伏せて、全提出物の内容と質は相互に比較できるようにする。これらの視聴ファイルを通じて、個々に、講評内容に関連して、修正がなされているかは、評価の対象となる。さらなる疑問や議論は、大学ポータル掲示板やコメント欄を用いて行う。




授業計画
1回
第1回 「文学とはなにか−発生論的考察とその先に見えてくること」(視聴ファイル 50分x2)
以下の問いを中心に考察する。生物の個体間情報伝達さらには高等動物の信号には「文学」はないのか。「言語」の成立と発展において、相互置換可能性(おたがい他人の立場に立って考えてみることができること)はいかに進化を遂げて、道徳性とともにいつどのようにして「文学性」を獲得したのか。人類誕生後、無文字社会には「文学」はなかったのか。ひとはいつ歌い詩を奏でて物語る存在、また出来事を記憶する存在になったのか。

到達目標: 人類の共通体験としての文学とは何であり得たか、過去の生成条件を考えるとともに、現代の生においていかなる意義を有するか再確認する。

事前学習
シラバスの内容を熟読すること(20分)。また、事前に配布する講義資料をおおよそ大項目に目を通しておくこと(45分)。
事後学習
視聴ファイルを通して自らが展開することができた思考の過程について、表現を与え、覚え書きとして残す。あとで読み返す際のために、日付をつける。自らの、自己探求ノートとして、覚え書きを作成する。右ページ、あるいは、左ページなど、あるいは、ファイルなど、<余白>をもうけ、後から(異なる色で)、書き込み、自分自身の思考のあしあとをたどれるようにする。なお後の回で自分が新たに問いを展開している過程で、問いがおたがいにつながり合っていることに気づいたら、できるかぎり、あとで思い起こせるように、つながりを明らかにしておく。場合によっては、大きな問いとして、全体のつながりを、箇条書きや、模式図を描いておく。(90分)
さらに学びを発展させていくために、講義関連資料にも目を通し、具体的な文学テクストについて理解を深めることをこころみる(30分)。

2回
第2回 「外界からの報告はどのようにして文学性を獲得して行ったか」(視聴ファイル 50分x2)
集団的に暮らす共同体の境を越え出て、見たこと聞いたことを共同体に帰って来て報告することはいつどのようにして文学性を獲得して行ったか。近代の旅行記に先立つ、外界報告物語、冒険譚、探査・踏査の報告は、その外界報告を生み出す世界観を変容・拡張していったか。そして外界報告共有の精神はどのようにして宇宙探査や微小世界の探究という科学的精神へと展開して行ったか。(ホーマー『オデュッセイア』、玄奘『大唐西域記』、「シンドバッドの冒険」ほか(『千夜一夜物語』)、マルコポーロ『東方見聞録』、円仁『入唐求法巡礼記』、ガリレイ『星界の報告』、ダーウィン『ビーグル号航海記』、玉虫左太夫『入北記』、『航米日録』、明治期外国人(宣教師ほか)日本旅行記、滞在記など)
到達目標: 人間にとって<外部>の踏査、探査の領域の変容と拡大の展開と文学との対応から、その相関の意義を考察する。
事前学習
与えられている問い(あるいはテーマ)から、自分自身でも、どのような問いであるか、そこから、どのように問題を展開していけるか、自分自身でもこころみる。その際、問いやテーマがどのようなものか、自分自身で理解を広げるために、講義関連資料中の文学テクストについても、分かる範囲で、目を通しておく。さらに、取り上げられている書物について、時間の許す範囲内で、難しいものであっても通読も試みる。(2時間)
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

3回
第3回 「共同体内で繰り返し物語られて行く集団的記憶はどのようにして文学性を獲得して行ったか」(50分x2)
世界をことわけ、区別、分別することの原初記憶や、世界の存在者に命名をする原初記憶の意味する、物語られる世界の前提となる、「物語る」世界の成立とはどのようなものであったか。また、その世界内交流、共同体間交流がもたらす「物語り」の社会的な時と場の成立はどのようなものであったか。(各伝統文化において伝承され採集されて来た神話、民話、世間話、噂話の世界、『イソップ物語』、グリムの民話収集、フレイザー『金枝篇』そのほか)

到達目標:共同体内で「物語り」の場がどのように生成して継承されていったか、また現代世界におけるその意義を考察する。

事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

4回
第4回 共同体の統一と存続にかかわる集団的記憶は物語行為の社会的波及をどのようにもたらすことになったか—戦記、叙事詩、英雄譚の成立と展開 (50分x2)(ヘロドトス『歴史』、カエサル『戦記』、叙事詩『マハーバーラタ』、『ラーマーヤナ』、ホメーロス『イーリアス』、ウェルギリウス『アエネーイス』、近代国民国家による国民戦争の記憶と記録ほか)

到達目標: 集団的記憶と記録の社会的な装置としての文学性について考察する。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

5回
第5回 共同体内の儀礼、祭礼の舞踊から発展する扮技・演示・演劇(仮面劇)がもたらしたものはなにか−役割分掌的現実世界の反省的理解・実践とその内省的発展形態が生み出した文学性
ソポクレス『オイディプス王』におけるオイディプス言語の成立の意味(意識の前面、表層における統御、統制から脱する物語的自己存在、劇的アイロニーを生きる存在—超越的視点の分化)、アウグスティーヌス『告白』、明恵上人『夢記』、シェークスピア『ハムレット』、ドストエフスキーほか)

到達目標:自らの責任性のもとにあることばそのものが、自分自身にとって知り得ない意味領域として、同時に生成進行していく生を生きていることの人間的な意味について考察する。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

6回
第6回 共同体的帰属性、「血族的」紐帯との間で対峙、拮抗、親和、離脱の運動を繰り返す「自己像」を「生」の全体性として象ることはどのようにして生まれたか—伝記文学、自伝文学の誕生(クセノフォン『ソークラテースの思い出』、新約聖書 福音書−イエス・キリスト伝、仏教経典におけるブッダ伝形式、論語、ベンジャミン・フランクリン『自伝』、ジャンジャック・ルソー『エミール』、J.S.ミル『自伝』ほか)

到達目標:自伝や伝記が誕生したこと、これまでのその歴史的展開の意義とについて考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

7回目
第7回 共同体、自己を含む世界全体の存立原理の希求—超越的帰一存在による世界創造の展開 (50分x2)(各伝統文化における宇宙開闢譚、世界創造物語、旧約聖書 創世記、『古事記』、『日本書紀』、リグ・ヴェーダ、預言書、『アル・クルアーン』、『ウパニシャッド』、プラトン『パルメニデース』、プロティノス『エンネアデス』ほか)

到達目標:人間が自己並びに自己を含む総体としての世界について、なおその始まりを創造してきたか、その意味を考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

8回
第8回 人間知の限界性への自覚と共在する世界の根源的な脈絡・脈動へのいざない (50分x2)(因果応報物語(ジャータカ、仏教説話ほか)、奇蹟物語、幽霊譚、怪異譚(『聊斎志異』)、サスペンス、ミステリーの誕生)

到達目標:人智を越えた領域であり、同時に、開示され得るものとして意識される領域としてのミステリーが人間をとらえて離さずに来た歴史的展開について考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

9回
第9回 欲求と理性に引き裂かれる分裂的存在様態からの昇華の帰趨ー愛(他者との合一への希求)とその挫折(50分x2)
(旧約聖書創世記エデンの園におけるアダムとエヴァの罪、ヘロドトス『歴史』、プラトン『国家』におけるギュゲスの物語、異類婚姻譚、中世騎士道物語、シェークスピア『ロミオとジュリエット』、コンスタン『アドルフ』、ゲーテ『若きウェルテルの悩み』ほか)

到達目標: なぜ文学において「愛」は重要なテー、マデありつづけているかを考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

10回
第10回 言語的表術の透明性に関する限界への挑戦—あいまいさのない言語として「証明」は可能か—明晰、判明への希求—確実な知識の探究とその記録 (アリストテレス現存作品、エウクレイデース『原論』、ニュートン『プリンキピア・マテマティカ』、アインシュタイン、ゲーデル、法廷における判決文、厳密な学術言語の追求)(50分x2)

到達目標:論理学における人口的な記号の体系はじめ、人類における言語におけるあいまいさを排除するこころみの歴史について考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

11回
第11回 文学は誰に向って語られているのか—詩的言語の技巧(古代ローマの詩人たち)、美的言語の追求(ペーター、ラスキン)、青少年向け読み物 juvenile(ジュール・ヴェルヌ、サンテ・グジュペリ)、童話、ファンタジーに隠された世界像(C.S. ルイス、ロアルド・ダール)、教訓詩の伝統ほか) (50分×2)

到達目標:文学作品を読み解く上での、作品内部に与えられている「語りて」と「聴き手」との潜在的関係性が現実の読者に与える意味について考える。



事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

12回
第12回 社会構成態としての文学作品の有する社会解放力 (50分x2)

文学作品は、現代産業社会においては余暇の「暇つぶし」としての機能を担い、商業的出版においては、エンターテインメントの役割をも商業的に担わされている実態がある一方で、読者による享受においては、社会によってつくられた場にありながらも、作品を通した世界創造を通して、享受者の実践に関わり、拠って、社会的に世界を再構成していく働きをも担っていることを確認する事は不可能ではない。(現代文学がになっている社会的な差別、不平等からの解放の力を、辺境や植民地やマイノリティが創出する作品創造とその享受のうちにその可能性を探ることができる。)(ジョゼフ・コンラッド、クレオール文学、マーク・トゥウェイン、マハトマ・ガンディー、マーティン・ルーサー・キングほか)

到達目標:文学の有する社会的機能について、とりわけ現代文学を通して再確認する。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

13回
第13回 近代社会の社会的拘束力を破繭する力としての文学性 (50分x2)
文学は、社会的抑圧や搾取に対する人間の抗いをどのように描いてきたかを考察する(石川啄木、ヘルマン・ヘッセ、ディケンズ、ヴィクトル・ユーゴーほか)

到達目標: 個人の努力では打ち壊し難い「鉄の檻」とも映る社会的拘束や規範に対して文学はそれと置き換わり得る社会のありようを直接間接に提示してきていることを確かめる。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
授業の最終の講評を終えた段階で、改めて、自分自身の提出課題の全体を読み直し、気づいたことを、後から読み直したときに分かるように、追記していく。

14回
事前学習
事後学習

15回
事前学習
事後学習

16回
事前学習
事後学習

17回
事前学習
事後学習

18回
事前学習
事後学習

19回
事前学習
事後学習

20回
事前学習
事後学習

21回
事前学習
事後学習

22回
事前学習
事後学習

23回目
事前学習
事後学習

24回
事前学習
事後学習

25回
事前学習
事後学習

26回
事前学習
事後学習

試験及び成績評価
13回までの小論課題について、毎回を10点として採点して、最終的に、合計点を、130点満点で割って計算して、100点満点に加算して、成績を評価する。
課題提出に当たっては、授業設定日の授業時間開始時間から、翌週の同じ曜日の開始時間前までを、提出期間とする。なお祭日、休業が入る場合は、次の回まで適宜延長する。
課題(試験やレポート等)に対するフィードバック
授業出席確認小論課題については、大学ポータルを通じて講評する。
講義で使用するテキスト(書名・著者・出版社・ISBN・備考)
講義資料ファイルで事前配布
参考文献・推薦図書
筑摩書房『世界文学大系』(1958-1968) 100巻
研究室
A311
メール:akitaki 以下JIUメール
オフィスアワー
火曜日 2限
水曜日 1限
科目ナンバリング
学位授与方針との関連
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