Syllabus data

授業科目名
Topics in Japanese Studies(Cultural Exchange)
学年
1Grade
単位数
2.00Credits
実務経験の有無
開講クォーター
semester not specified
担当教員
Yasuharu Maeda
授業形態
授業で主に使用する言語
日本語
授業方法区分
開講キャンパス
Togane Campus
授業の到達目標及びテーマ
本講座は、漢籍(以下、中国の古典作品やその思想)が日本文学にどのように受容されたかを、日本文学の個別の作品を読み解くことによって、理解できる。 −奈良平安時代から大正時代までー
授業の概要
日本の古典(たとえば『源氏物語』『枕草子』『徒然草』『奥の細道』など)には、多くの漢籍が引用されている。その内容は、『詩経』『易経』『論語』などの経書、『史記』『漢書』などの史書、『老子』『荘子』『孟子』などの諸子から、東晋の陶淵明、盛唐の杜甫、中唐の白居易の詩に至るまで、広範囲なものとなっている。そこで、引用された漢籍を正しく解釈し、その上で、どのように受容されたかを考察する。このように漢籍は日本人の教養の中に知識として融けこみ、それは、いわゆる古典文学だけではなく、たとえば森鴎外・夏目漱石・中島敦・太宰治などの日本の近代文学作品においても、その影響を見て取ることができる。そこで、これらの近代の作者の作品についても、具体的な例をあげながら読み解くこととする。また、漢文受容の際に用いられた方法、「漢文訓読」についても学習する。具体例を示すなら、

具体例
■『枕草子』二八十段
雪のいと高う降りたるを例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらうに、「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、御格子上げさせて御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。人々も「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。なほ、この宮の人にはさべきなめり。」と言ふ。

上記は「枕草子」二八十段。ここには、「白氏文集」からの引用に基づいた言葉があり、さらにそれがこの章段を理解するためのキーセンテンスとなっている。だから、引用された漢籍を正しく解釈し、その上で、作品を読み解くことが大事になろう。それは、どのように中国文化を受容したかを考察することともなる。ここでは、下記の漢詩が引用されているが、その理解には、当時、漢籍理解のために用いた訓読という読解法を用いて理解することとした。下記参照。

漢詩文  確認
香爐峰下、新卜山居、草堂初成、偶題東壁      白居易                                
日高睡足猶慵起 小閣重衾不怕寒
遺愛寺鐘欹枕聽 香爐峰雪撥簾看
匡廬便是逃名地 司馬仍爲送老官
心泰身寧是歸處 故郷何獨在長安
《形式》 七言律詩   押韻・寒、看、官、安   
《語注》慵 めんどうくさい 小 閣小さなたかどの 小さな二階家  衾 夜具 ふとん 遺愛寺 香爐峰の北にあった寺  香爐峰 江西省九江市の南に廬山があり その北峰を香爐峰という。山容が香爐に似ているのでこの名あり。
匡 廬廬山の別名 周の時代匡俗(きょうぞく)という隠者が廬(いおり)を作って住んでいたので廬山とよばれた  
司馬 唐代州の軍事を司る官名  歸 處安住の地  何獨 どうして…だけであろうか 反語
《書き下し文》
香炉峰下(こうろほうか)、新(あら)たに山居(さんきょう)を卜(ぼく)し草堂(そうどう)初(はじ)めて成(な)り 偶(たまたま)東壁(とうへき)に題(だい)す
日(ひ)高(たか)く睡(ねむ)り足(た)れども猶(な)ほ起くるに慵(ものう)し 
小閣(しょうかく) 衾(ふすま)を重(か)ねて寒(かん)を怕(おそ)れず
遺愛寺(いあいじ)の鐘(かね)は枕(まくら)を敧(そばだ)てて聴(き)き        
香爐峰(こうろほう)の雪(ゆき)は簾(すだれ)を撥(かか)げて看(み)る
匡盧(きょうろ)は便(すなは)ち是(こ)れ名(な)を逃(のが)るるの地       
司馬(しば)は仍(な)ほ老(おい)を送(おく)るの官(かん)たり
心(こころ)泰(やす)く身(み)寧(やす)きは是(こ)れ帰(き)する処(ところ)
故郷(こきょう)は何(なん)ぞ独(ひと)り長安(ちょうあん)にのみ在(あ)らんや

《現代語訳》
香炉峰のふもとに新たに山荘の地を定めて草庵を建て、ふと東側の壁に書きつける
日は高くのぼり、眠りも十分なのに、なお起きるのがおっくうだ。
小さな家で布団を重ねて寝ているので、寒さの恐れはない。
遺愛寺の鐘は枕を傾けて頭を高くして聴き、
香炉峰の雪は簾をはね上げて眺める。
ここ廬山は名利を離れるにはふさわしい土地だ。
司馬という役職も、老後を過ごすのにふさわしい官である。
心が安泰で、体も安らかならば、それこそ帰るべき場所である。
故郷は長安だけであるというわけではない。

授業計画
1回
第1回  「万葉仮名」と漢文訓読(返り点・送り仮名など)について
到達目標 本講座の概要についてシラバスをもとに理解できる。また、「万葉集」「古事記」の表記に用いられた「万葉仮名」を理解することによって、奈良時代の漢字・漢籍受容の一端が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(返り点・送り仮名など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「『古今和歌集』仮名序」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]「漢字の受容」について自己の考察をまとめ、レポートとして提出する。


2回
第2回 「古今和歌集」仮名序と「詩経」六義良時代、漢文訓読(書き下し文など)について
到達目標「古今和歌集」仮名序と「詩経」六義を比較読みすることによって、「詩経」六義の奈良時代の受容の一端が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(書き下し文など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「古今和歌集」仮名序と「『詩経』六義」について、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義によって「『詩経』六義の受容」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。


3回
第3回 「枕草子」(第二八十段)と漢文訓読(再読文字・否定形など)について
到達目標「枕草子」第二八十段には、「白氏文集」作品が引用されている。その引用の仕方・方法・場面、影響を読み解くことによって、作者の漢籍受容の一端が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(再読文字・否定形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「『枕草子』第二九九段」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって『枕草子』の「引用」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。

4回
第4回 「枕草子」と「白氏文集」、漢文訓読(疑問形など)について
到達目標「枕草子」にさまざまに引用された「白氏文集」の作品が引用されている。その引用の仕方・方法・場面、影響を読み解くことによって、作者の漢籍受容の一端が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(疑問形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材『枕草子』に引用された「白氏文集」作品を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって『枕草子』の「漢籍の受容の方法、影響」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。

5回
第5回 「源氏物語」桐壺巻と「白氏文集」、漢文訓読(反語形など)について
到達目標「源氏物語」桐壺巻に引用された「白氏文集」の作品を読み解くことによって、漢籍受容の方法、影響が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(反語形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「『源氏物語』桐壺巻」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって「『源氏物語』桐壺巻」の「漢籍受容の方法、影響」についての考察まとめ、レポートとして提出する。

6回
第6回 「源氏物語」須磨巻と「白氏文集」、漢文訓読(詠嘆形など)について
到達目標「源氏物語」須磨巻に引用された「白氏文集」の作品を読み解くことによって、漢籍受容の方法、影響が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(詠嘆形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「『源氏物語』須磨巻」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって「『源氏物語』須磨巻」の「漢籍受容の方法、影響」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。

7回目
第7回 「徒然草」と「白氏文集」、漢文訓読(使役形など)について
到達目標「徒然草」に引用された「白氏文集」二十一箇所を読み解くことによって、その引用の仕方が理解できる。
また、漢籍受容の方法:漢文訓読(使役形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「『徒然草』に引用された「白氏文集」二十一箇所」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって『徒然草』の「引用の仕方」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。

8回
第8回 「徒然草」の漢籍受容と漢文訓読(受身形など)について
到達目標「徒然草」に引用された「白氏文集」二十一箇所の引用の仕方から、漢籍受容の実態とその方法、影響が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(受身形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「『徒然草』に引用された「白氏文集」二十一箇所」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって『徒然草』の「漢籍受容」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。

9回
第9回 「徒然草」と「論語」、漢文訓読(仮定形など)について
到達目標「徒然草」に引用された「論語」の語句やその引用の仕方を読み解くことによって、漢籍受容の実態とその方法、影響が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(仮定形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「『徒然草』に引用された『論語』」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって「徒然草」の「漢籍受容の方法、影響」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。

10回
第10回 「奥の細道」と「李白」作品、漢文訓読(限定形・累加形など)について
到達目標「奥の細道」に引用された李白の作品数編を読み解くことによって、漢籍受容の方法、影響が理解できる。
また、漢籍受容の方法:漢文訓読(限定形・累加形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「『奥の細道』に引用された李白の作品数編」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって「奥の細道」の「漢籍受容の方法、影響」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。

11回
第11回 夏目漱石の漢詩と漢文訓読(比較形など)について
到達目標夏目漱石の漢詩数編を読み解くことによって、漢籍受容の方法、影響が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(比較形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「夏目漱石の漢詩数編」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって「夏目漱石」の「漢籍受容の方法、影響」についての考えをまとめ、レポートとして提出する。

12回
第12回 夏目漱石と儒学と漢文訓読(選択形など)について
到達目標漱石文学は儒・道・禅の三つの学問を基盤として出来上がったといわれる。特に、儒学受容の影響について、漱石の小説「こころ」を読み解くことによって、その受容の実態と方法、影響が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(選択形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]配布した教材「こころ」を読み、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって「夏目漱石」の「漢籍受容の方法、影響」についての考察をまとめ、レポートとして提出する。

13回
第13回  芥川龍之介と漢籍受容、漢籍受容の方法:漢文訓読(比況形など)について
到達目標 芥川龍之介「杜子春」と唐代伝奇「杜子春伝」を比べ読みすることによって、漢籍受容の方法、影響が理解できる。また、漢籍受容の方法:漢文訓読(比況形など)も理解できる。
事前学習
[事前の学習:2h]「『杜子春』と唐代伝奇『杜子春伝』」を比べ読みし、予習する。
事後学習
[事後の学習:2h]講義・アクティブラーニングによって「芥川龍之介」の「漢籍受容の方法、影響」についての考えをまとめ、レポートとして提出する。

14回
事前学習
事後学習

15回
事前学習
事後学習

16回
事前学習
事後学習

17回
事前学習
事後学習

18回
事前学習
事後学習

19回
事前学習
事後学習

20回
事前学習
事後学習

21回
事前学習
事後学習

22回
事前学習
事後学習

23回目
事前学習
事後学習

24回
事前学習
事後学習

25回
事前学習
事後学習

26回
事前学習
事後学習

試験及び成績評価
評価は、レポート提出・期末試験による。
評価配分は以下の通りとする 。
・試験及び成績評価:評価の方法:以下のアからウまで評価配分に基づき総合的に評価する
          ア、授業中実施の小テスト及び授業終了後の課題レポート:40%
          イ、期末試験:50%
          ウ、授業参加度:10%
課題(試験やレポート等)に対するフィードバック
次回授業で解説、また解説コメントシートの配付をします。
講義で使用するテキスト(書名・著者・出版社・ISBN・備考)
『漢文必携』
菊池隆雄・村山敬三・六谷明美
桐原書店
978-4342353529
参考文献・推薦図書
参考図書については、授業で適宜紹介
研究室
東金キャンパス
オフィスアワー
初回の授業時に説明します。
科目ナンバリング
学位授与方針との関連
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