シラバス情報

授業科目名
美学・芸術学
学年
1年
単位数
2単位
実務経験の有無
開講クォーター
セメスタ指定なし
担当教員
瀧 章次、瀧 章次
授業形態
授業で主に使用する言語
日本語 (Japanese)
授業方法区分
開講キャンパス
オンライン(オンデマンド)
授業の到達目標及びテーマ
本講義は、「美」の理念(美しさ、立派さをうちに含む理念)という人間性の共通基盤に対する理解を深め、それぞれの人間の内に生きている創造性を探ることをねらいとする。具体的には、創作あるいは享受等、美術、芸術作品の身近な経験をてがかりに、その社会的、文化的、歴史的、存立条件を考察することを手始めに、想像力を活かして、過去の人々の経験に関する同様の存立条件へと考察をひろげる。この作業を通して、美術・芸術一般の成立条件、さらには、「『美』とはなにか」という問いへと迫る。

授業の概要
①  科目名: 「美学芸術学」(英語名: Aesthetics and Art Studies)
②  形式: オンデマンド 講義 (オンデマンド授業として、13回、各回、理論編60分、入門編40分、視聴ファイル2本が配信される。授業出席確認のため毎回(全13回)小論課題が課せられる。課題提出締め切りはおよそ1週間を目途とする。)
③  内容: 人工知能(AI)はじめ電子工学、情報工学の急速な展開に裏付けられた現代産業社会における「美術」や「芸術」の多様性を確認する。即ち、諸ジャンルの作品創出・制作には、歴史相、享受階層、社会経済関係、技術的条件等が関り社会的に造られている実態があることを確認する。各回入門編では、美学芸術学の対象領域における、この多様性を、身近な作品を通して確認する。その上で、各回理論編では、先行する「美学芸術学」の諸思想、諸理論を基礎知識からはじめて概要を学ぶ。以上、入門編、理論編の学びを通して、美術・藝術における作品創造・享受の理念を問い、「芸術」ならびに「美」に関する人類的共通基盤の可能的理念を考察する。
④  授業回数: 13回
⑤  出席確認方法: 大学ポータルに提出される毎回の小論課題(なお、内容と質において大学の基礎教養の基準を満たすもののみを受理する)
⑥ 履修者への連絡及び教員への連絡方法: 大学ポータルを通じて行う(個人的なことについてはJIUメールで受け付ける)
⑦ 学生等と教員、或いは学生同士の意見交換の方法: 大学ポータルの掲示板、QA
⑧ 設問解答・添削指導・質疑応答等による十分な指導: 毎回、受講者全員の提出物については、日本語並びに内容について講評を大学ポータルを通して返却する。


授業計画
1回
第1回 入門編: われわれの経験の中における忘我や陶酔の経験をふりかえることを通して「自己」と「自己を超え出る」あるいは「自己から踏み出す」こととの差異を考える。

理論編:日本語『美』、『芸術』、『美学』、『美術』について、美学芸術学の基礎術語を学ぶ。翻訳語の背景にある西欧文化体系、並びに、移入の基盤となる東アジア漢語文化圏の伝統とを考察して、人類的価値基盤の可能性を考える。」

到達目標:美学芸術学が何であるのか、また、何でないのかを考えるてがかりを得る。
事前学習
シラバスの内容を熟読すること(20分)。事前に配信する授業オリエンテーションを視聴すること(30分)。また、事前に配布する講義資料をおおよそ大項目に目を通しておくこと(15分)。
事後学習
視聴ファイルを通してそれぞれ自らが展開することができた問い(探究)の過程について、表現を与え、覚え書きとして残す。あとで読み返す際のために、日付をつける。自らの、自己探求ノートとして、覚え書きを作成する。右ページ、あるいは、左ページなど、あるいは、ファイルなど、<余白>をもうけ、後から(異なる色で)、書き込み、自分自身の思考のあしあとをたどれるようにする。なお後の回で自分が新たに問いを展開している過程で、問いがおたがいにつながり合っていることに気づいたら、できるかぎり、あとで思い起こせるように、つながりを明らかにしておく。場合によっては、大きな問いとして、全体のつながりを、箇条書きや、模式図を描いておく。(90分)
さらに学びを発展させていくために、講義関連資料にも目を通し、先人たちの具体的なテクストや、専門的な術語による説明についても、理解をひろげていくことをこころみる(30分)。

2回
第2回 入門編: 身近なところで試すことができる何かの、あるいは、だれかの「ふりをする」、また、朗読を通して、作者の声を世界に立ち現わせる、芝居のせりふを役作りを考えて実演してみる、以上のすぐにもできる身近なパフォーマンス、身近な演出から、それぞれの内に生れてきた経験や感情を確かめる。
理論編:「美学」、「芸術学」が西欧の伝統においてどのように規定されて来ているか、また21世紀の現代においてどのように人類の世界的理念として新たな展開を遂げているか、概要をつかむ。 


到達目標:自分自身の内側に沸き起こる「自分自身」を超え出ていくことの体験と、その経験を強く押し出している自分自身の中の想像力(imagination)と創造力(creativity)を確かめる。それと平行して、そのような経験を世界全体の中に、また、人間の経験の全体の中に位置づけることをこころみる。
事前学習
与えられている問い(あるいはテーマ)から、自分自身でも、どのような問いであるか、そこから、どのように問いを展開していけるか、自分自身でもこころみる。その際、問いやテーマがどのようなものか、自分自身で理解を広げるために、講義関連資料についても、分かる範囲で、目を通しておく。さらに、取り上げられている書物について、時間の許す範囲内で、難しいものであっても通読も試みる。(2時間)
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

3回
第3回 入門編: 人類の歴史以前から始まる声を用いて「歌う」こと、楽器を用いて「楽音」、「楽曲」を世界に鳴りひびかせること、この経験を、実体験的に、自分自身で演じ、感じることを通して、その経験の意味を考える。 
理論編:古代ギリシア哲学におけるプラトンの著作、いわゆる劇としての対話篇、これらの中に登場する、古代ギリシア語において対応する「美」に関する理論、中でも、「美のイデア」を含む「イデア論」について学び、21世紀の現代に至るまで、美学芸術学の理論の導きとしていかなる意義を有するか考える。

到達目標:人類の全体験の諸相の中で、あらためて、「自己を超え出る」ことの経験を、声楽や器楽の実体験をたよりに、そのことを理論的にどのようにとらえることができるか、プラトンのイデア論をてがかりに考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

4回
第4回 入門編: 「自然」、ヨーロッパ語、例えば、英語 'nature'が何であるのかという問題も意識しつつ、まずは身近なところで、山の頂上や、滝の前に立って、「自然」のなかで圧倒される、息をのむ、感動する経験を共有する。その中で、そうした経験の意味を考える。
理論編:古代ギリシア哲学における哲学者アリストテレスの著作『詩学』の理論的意義を、「ミーメーシス」、「カタルシス」という理論を中心に学ぶ。

到達目標:自己自身が完全に「満たされる」、「充実する」そのような感動という享受者の享受経験を、作品創作過程、作品創作技術の側からどのように理論化することができるか考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

5回
第5回 入門編:「自然」の中でも「いきもの」の活動、すがたに魅了されるにはなぜであるのか、この経験をてがかりに、人間の経験における「美」とのかかわりを考える。 
理論編:古典古代の伝統、ルネッサンスも踏まえた上で、18世紀半ば、ドイツ哲学の展開の中で登場してきたバウムガルテンの美学の意義について、理性に対して下位に位置づけられた感覚・感情に関する理論学の同時代的意義を学ぶとともに、現代的有効性をも考える。

到達目標:われわれの感覚、感情というものを理性や知性などと区別する考えはどこまで自覚的に厳密に把握することができるのか、また、そのような対立のもとに展開された理論はいかなうものであり、現代直どのような問題を有するかを考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

6回
第6回 入門編: いきものに感動する経験をもとに、人間は人間自身のすがたや活動にどのような感動を覚えて来たか、「身体」における理念としての「美」の可能性を具体的な諸表象、諸作品を通して考える。
理論編: バウムガルテンとほぼ同時代を生きたイマヌエル・カントの批判期含めた19世紀初めに終わる全体の哲学的展開を確認した上で、その「美学」はどのような位置づけにあるかを確認するとともに、シェリング、ヘーゲルと展開されて行くドイツ観念論における美学、また、ロマン派芸術との関係を考える。

到達目標:ドイツ観念論の現代的な意義、ならびに、カントの美学の美学理論の歴史における意義について、要点をつかむ。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

7回目
第7回 入門編: 風景画の成立について西欧絵画の歴史を背景にたどり、なぜ風景を絵画に描くことが求められたかその背景的思想を考える。
理論編: ドイツ観念論の歴史において、また、ドイツにおけるロマン派芸術の歴史において、シェリングの位置づけを確認した上で、その作品創造における弁証法的な作品構造の解明の意義を考える。

到達目標:芸術、美術の分野における作者の作品創造における作品生成をどのように理論的に解明できるか、シェリングの弁証法的解明の要点をつかむ。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

8回
第8回 入門編:建築の歴史において建築にはどのような人間の理念がそこに働いているか、具体的歴史的な建築を通して考える。
理論編: ヘーゲルの美学について、その精神哲学全体を背景とした位置づけについてその要点をつかむ。

到達目標:ヘーゲルにおいて理論的に純化されるに至った美学思想におけるその神学的な構造と運動とについてその要点を掴むとともに、その後現代に至るまでの美学芸術学の展開の中での理論的有効性についても考える。

事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

9回
第9回 入門編: 人間の外面、外形などの現象面での視覚的体験がほんとうに人間性の全体性を表しているものと言えるのか、人間性の全体をあらわすための作品創造はどのようなものか、考える。
理論編: ドイツ哲学の展開の文脈で考察してきた美学理論に対して、18世紀、19世紀における美学芸術思想として、ヴィンケルマン、ハチスン、ラスキン、ペーターらの思想の同時代的意義を考える。

到達目標:西欧近代の科学革命、市民革命、産業革命という近代化諸相を背景として、美的、芸術的経験は、どのように位置づけられ、どのように変転して言っていくものであるのか、考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

10回
第10回 入門編: 舞踊の歴史の全体を具体的な諸例を通して顧みた上で、その芸術性、そこで問われている理念としての「美」について考える。
理論編: ニーチェ、マルクスが美学芸術学の思想において、それぞれいかなる意味で西欧の伝統的な思考の枠組みを根底的に批判する者であったか、その核心を学ぶ。

到達目標:作品創造、作品享受が歴史的、社会的伝統において、どのような危機を孕んでいるのか、19世紀以来の問題性についてその要点をつかむ。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

11回
第11回 入門編:ロダン「考える人」はじめ、彫刻の歴史において、建築の一部として製作された彫像に対して、19世紀以来、作品創造者はどのような危機に立たされてきているのか、考える。
理論編:フェヒナーの実験美学が、19世紀の展開の中で、ドイツ哲学を中心とした理論的展開に対して有している意義を確認すると同時に、創作の技術的工学的分析が、産業社会の進展、AIはじめ精度の高い複製技術の展開において、いかなる意義を持つかを考える。

到達目標:高度な技術を背景とする産業社会の進展、情報工学・電子工学の進展において、作品創造がいかなる創造性の危機に立たされているか考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習に与えられたことをこころみる。

12回
第12回 入門編: 合唱(chorus)の起源と歴史的展開を学ぶ。
理論編:ベンヤミンとハイデガーの芸術思想を通して、人間性の現代的危機の根本を考える。

到達目標:二つの大戦に象徴される総力戦思想を推進する社会的構造的問題を顧みて、人間性の自壊的危機、破局に直面している現代に対して、美学芸術学はいかなる根本的批判と希望を提起できるかを考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
第1回目の事後学習と同じことをこころみる。

13回
第13回 入門編:ポピュラー・ミュージックの誕生を1950年代のRock'n Rollの生成を通して考える。
理論編:アーサー・ダントーの芸術理論を学ぶ。

到達目標:西欧における美学芸術学の展開を顧みて、21世紀の世界における人類的な理念としての「美」の可能性を考える。
事前学習
第2回目の事前学習と同じことをこころみる。
事後学習
最終の授業を終えた段階で、改めて、自分自身の自己探求ノートを読み直し、気づいたことを、後から読み直したときに分かるように、追記していく。

14回
事前学習
事後学習

15回
事前学習
事後学習

16回
事前学習
事後学習

17回
事前学習
事後学習

18回
事前学習
事後学習

19回
事前学習
事後学習

20回
事前学習
事後学習

21回
事前学習
事後学習

22回
事前学習
事後学習

23回目
事前学習
事後学習

24回
事前学習
事後学習

25回
事前学習
事後学習

26回
事前学習
事後学習

試験及び成績評価
13回の小論課題について、毎回を10点として採点して、最終的に、合計点を、130点満点で割って計算して、100点満点に加算して、成績を評価する。
課題提出に当たっては、授業設定日の授業時間開始時間から、翌週の同じ曜日の開始時間前までを、提出期間とする。なお祭日、休業が入る場合は、次の回まで適宜延長する。
課題(試験やレポート等)に対するフィードバック
授業出席確認小論課題については、大学ポータルを通じて講評する。
講義で使用するテキスト(書名・著者・出版社・ISBN・備考)
講義資料ファイルで事前配布
参考文献・推薦図書
プラトン『パイドロス』 岩波文庫 858円
プラトン『饗宴』岩波文庫 726円 
プラトン『国家』岩波文庫 上下巻 計2840円
アリストテレス『詩学』岩波文庫 1067円
ヴィンケルマン『ギリシア芸術模倣論』 岩波文庫 1320円
A.G.バウムガルテン 『美学』 講談社学術文庫 2310円
イマヌエル・カント『判断力批判』岩波文庫 上下巻 計 2240円
F.W.J. シェリング 『超越論的観念論の体系』(<新装版> シェリング著作集 第2巻)文屋秋栄 8800円
G.W.F. ヘーゲル 『美学講義』法政大学出版局 5060円
F. ニーチェ 『悲劇の誕生』 岩波文庫 990円
マルクス/エンゲルス 『ドイツ・イデオロギー』 岩波文庫 1078円

ジョン・ラスキン 『建築の七灯』 鹿島出版会 3080円
ウォルター・ペイター 『ウォルター・ペイター全集』 3巻 筑摩書房
M. ハイデガー 『芸術作品の根源』 平凡社 1430円
W. ベンヤミン『ベンヤミン・コレクション 1』 筑摩学芸文庫 1760円
W. ベンヤミン『ベンヤミン・コレクション 2』 筑摩学芸文庫 1650円
W. ベンヤミン『ベンヤミン・コレクション 3』 筑摩学芸文庫 1870円
A.C. ダントー 『芸術とは何か—芸術の存在論と目的論』 人文書院 2860円
A.C. ダントー 『芸術の終焉の後—現代芸術の歴史と限界』 三元社 5280円


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