日英同盟の締結から解消に至るまでの期間において、日英両国の同盟関係に人種問題が与えた影響を、正負両面から分析した。人種問題は、同盟関係の裏に隠された潜在的な問題であったが、日英が共同して「黄禍」論などの黄色人種排斥論に反駁を加えることもあった。一方、英国には異人種との同盟を危惧する声もあり、同盟後期には異人種間同盟であることから日本側にも同盟に対する危惧の念が生まれた。しかし、全般的に見れば、日英同盟が日本にとって人種的孤立を回避し、西洋協調主義を促進する効果を持ったことを本稿は明らかにした。
Chapter 13 “The Anglo-Japanese Alliance and the question of race” PP.222~235