イエロー・ペリルの神話――帝国日本と「黄禍」の逆説
19世紀末から20世紀初頭にかけて流布した「黄禍」論の内容とその広まりを歴史的に辿りながら、それが政策決定や世論に与えた影響を吟味した。「黄禍」論は、政府レベルでは、日本外交に自制を促し、西洋協調主義を取らせる逆説的役割を果たしたが、一方で、野にあっては、日本例外主義の源泉となったことを明らかにした。また、「黄禍」論に対しては西洋世界でも反論が多くあったこと、ドイツ皇帝が唱えた「黄禍」論の影響が通説で言われているよりは限定的であったことなどを例証した。
彩流社