無細胞蛋白質合成系は、遺伝子からタンパク質を簡便かつ大量に得ることからできる方法として、近年特に着目されつつある手法である。これら無細胞合成系は、細胞の蛋白質合成系の部分のみが抽出されており、様々な条件下での蛋白質合成を調べることが可能なことから、蛋白質合成系の詳細な機構解明にも応用ができる。今回は低分子化合物が蛋白質合成系に及ぼす影響を検討すべく実験を行った。その結果、アルコール類、カルボン酸類については添加による合成量への効果は認められなかったものの、チオール類を添加によって、GSTの合成量の増大が認められた。一方、モノアミン類の添加では活性はほぼ同等にもかかわらず、合成量の低下が認められ、エチレンジアミンを添加した場合においては合成量、活性、ともに低下が見られた。その立体配座の影響を調べたところ、eclipsed conformationでは蛋白質合成量が低下し、staggered (gauche) conformationではfolding効率を低下さることが明らかとなった。この他、foldingについては、メルカプトカルボン酸類のカルボキシル基を水酸基にすることで、folding効率の向上がみられることが明らかとなった