歌人平忠盛の物語享受
平忠盛の和歌における物語の受容とその背景について論じた。忠盛の和歌には『伊勢物語』の受容が明らかであり、『源氏物語』『狭衣物語』についても若干の影響がうかがえる。その傾向は、貴種流離譚の要素を持った部分への傾斜が見られる。これらの物語の摂取は、特に、政界における盟友ともいえる藤原為忠の周辺からの影響が考えられ、彼等の交流は歌林苑における歌人らの交流の基盤となった可能性があることを指摘した。
お茶の水女子大学人間文化研究年報