『宇治拾遺物語』樵夫説話と慈円―第三話を起点として―
(1~18頁)『宇治拾遺物語』から、樵夫が主人公となっている、第三、四〇、一四七話をとりあげ、その人物造型と「北山樵客」と称した歌人慈円の像との重層性を論じた。第三話の樵夫には、同説話集内外の説話や『法華経』、今様との連想関係から、天台の不動信仰者としての面影を読むことができ、宗教者としての慈円と重なる。また、第四〇、一四七話における樵夫の当意即妙な和歌の詠みぶりには、慈円和歌との共通性がある。このような重層性から、同説話集と慈円との密接な関係について指摘した。
『千葉敬愛短期大学紀要』23