『今物語』第一八話を読む―箏・秋風楽―
(45~54頁)『今物語』一八話について注釈的考察、特に登場人物の比定を試みた上で同話の語りについて私案を述べた。即ち、箏を弾いていた女性には待賢門院美濃局(後に源師仲の妻)が想定され、その場合、西行が彼女にかけた言葉には、彼女がかつて寵愛を受けた鳥羽院の薨去をめぐる哀悼の意がある。『今物語』のキーワード「やさし」は、同話に含まれていないが、相手の心を読みとり当意即妙の行動をとること、また読者も同様の〝読み〟の力を試されているという点で、同話にも共通するキーワードと言える。
城西国際大学日本研究センター紀要2号