平安末から鎌倉初期における「すき」意識-新古今歌壇を中心として-
「すき」という概念が当時の歌壇でどのような位置付けにあったのか考察した。「すき」は、歌道の究極的思想とされる一方、実際の行為には「おこ(愚か)」という評価がくだされる。この二つの態度の距離について、漢字表記「数奇」の変遷や『明月記』中の用例のニュアンスなどから洗い直した。そして、「すき」は政治的不遇や逸脱と表裏一体であるために、官僚でもある歌人には、自負と自嘲の二重の意識で捉えられているとした。
千葉敬愛短期大学紀要