『宇治拾遺物語』第四八話の再検討-実方説話との関わりから-
『宇治拾遺物語』第四八話雀報恩事に関して、実方雀転生譚との連想性を論じた。実方は行成との口論によって陸奥国に左遷され、死後雀になって帰京したとされる。四八話では二人の老婆が雀に対する態度から一方は富を得、一方は死ぬが、実方と行成の幸不幸を想起させる。さらに、実方雀転生譚享受と雀を詠んだ和歌の流行が西行周辺から始まることから、本話の語りが歌人たちの間で特に効力を発揮するのではないかと考察した。
お茶の水女子大学人間文化研究年報