『今物語』第一話に関する一考察
『今物語』冒頭話に関する考証から、本話が物語的情趣の中に、鳥羽院周辺の政治的動向を語るものと解読した。人物比定によって、藤原実能が美福門院女房春日を養女としたことと、彼女が院の寵愛を受けていたことが本話の語りの動機となっていると考察した。また、本話には流行にのった『源氏物語』への生半可な理解を揶揄する要素も含まれる。こうした性質は、編者(藤原信実とされる)の新古今歌壇に対する態度と関係付けられるとした。
お茶の水女子大学人文科学紀要