もののあはれなる夕暮の空……」-『宇治拾遺物語』第五〇話の舞台演出-
『宇治拾遺物語』第五〇話を通して同書の表現意識を考察した。同源と思われる他書の類話と比べ、本話は前半が著しく異なる。この部分に見える「もののあはれなる夕暮の空」という表現には、新古今和歌における空への意識と、体言止めの詠法の影響とが認められる。また、この部分には「あはれ」「艶」という、俊成歌論の重要用語も含まれている。よって、本話は新古今和歌の美意識を反映しつつ、歌人に対するアピールを意図して改変されたものとした。
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