城西国際大学公開講座(茂原)「風景と時代 ―言葉をとおして」 演題「遁世者の心象風景 ―鴨長明『方丈記』」
鴨長明は晩年、『方丈記』をしるし、彼が動乱の時代に目にした風景・光景を描写しつつ、人と棲み家について論じた。書名に「記」とあるように、同書には記録としての性質があり、例えば、長明が23歳から31歳にかけて経験した、いわゆる五大災厄と、それによって荒れた都や人々の様子が詳述されている。これらの光景は、長明の中に無常観を形成していった実景であると同時に、無常観そのもののイメージ、心象風景であるともいえる。末世の人の心に映った風景とはどのようなものであったのか。『方丈記』を通してみた。