高齢者の嚥下機能の低下は、退行性変化のみならず廃用によっても修飾・助長される。構音と嚥下に関連する筋活動の類似性から、高齢者の日常にある「発話」に焦点をあて、受動的「発話」の促進が嚥下機能および生理機能に与える効果を検討した。
地域でボランティ活動をしている高齢者7名(男性4名、女性3名、平均年齢66.6±5.6歳)を対象に、受動的な「発話」(朗読:単音節7000個、以下受動的「発話」)の介入前後で、嚥下機能は反復唾液嚥下テスト3回目積算時間(嚥下時間)、口腔粘膜保湿度、舌圧、呼気筋力、オーラルディアドコキネシス、生理機能は血圧、脈拍、経皮的動脈血酸素飽和度、深部体温(鼓膜)、甲状舌骨筋の表面温度、簡易アミラーゼを評価した。
その結果、嚥下時間は7名のうち5名(約70%)が介入後短縮した。深部体温は介入前36.3±0.4(mean±SD)℃、介入後37.0±0.3℃、脈拍数は介入前68.3±13.0回/分、介入後72.6±13.2回/秒、甲状舌骨筋の表面温度は介入前32.7±1.1℃、介入後33.3±0.5℃で、被験者全員が介入後上昇し、介入前後比較において有意に上昇した(p<.05)。
高齢者の受動的「発話」は、脈拍、深部体温、甲状舌骨筋の表面温度を上昇させ、即時的に嚥下関連筋群を活性化させる可能性が示唆された。
実験協力、データ採取、検体採取