統合失調症の母親を持つ、40 代 A さん、30 代 B さん、2 名の女性を対象とした。インタビュー時間は、1回平均 80.5 分であった。2 人はともに、病気の母親からの愛情を感じられずに生きてきた。子ども時代に暴言や暴力を受けた B さんは、自分も同じことをするのではないかと、子どもを持つことに躊躇していた。結婚して義父母の楽しい子育ての話を聞き、自分も子を産んでも良いのかもしれないと思えるようになった。娘の髪を梳いている時、自分も母親に梳いてもらったことを思い出し、自分が娘を愛おしく感じるように、母親も同様に感じてくれていたのではないかと思った。さらに、Z グループで仲間と語り合う中で、母親の良い面を知っても良いと思えるようになった。母親に面倒を見てもらえずに育った A さんは、母親の病気を隠して生きてきた。自分の子ども時代を知った息子に、「お母さんは、これだけのことを乗り越えたんだね」と言われ、息子のように愛情深く母親を見ていなかったと気付き、母親を受け入れられるようになった。子どもが、親となって子育てをする体験は、子ども時代を振り返り親からの愛情を再確認する場であった。成人後の生きづらさからの回復には、自らの体験を振り返る機会が必要である。
(発表者)伊賀聡子・横山惠子