対象は左中大脳動脈領域の心原性脳塞栓症にて重度右片麻痺を呈した80代男性. 第29病日,当回復期病院に転院.全失語を呈し,易怒性が強く,Glasgow Coma Scale E4V2M4,Brunnstrom Recovery stage 上肢下肢: Ⅱ であった.第42病日より実験的介入を開始. 単一症例研究をABAデザインと設定しA 期を基礎水準測定期(A1,A2期),B期を操作導入期とし, A期は起居動作,座位,立位練習といった一般的な理学療法を実施.B期は,株式会社『いうら』EL-550のリフト機を用いて(座位タイプのスリングシートを選択)頭頚部軽度屈曲位で回旋が生じないよう頭部から大腿部までを覆うように包みリフト機で空中に吊り上げるといった治療介入(5分)をA期の理学療法に付加した.評価時期はA1期の前(以下;A1),B 期の前(以下;B前),B期の後(以下;B後),A2期の後(以下;A2)とし,各期間共に実施期間を5日とした. 評価項目をBurke LateropulsionScale(以下;BLS) ,The trunk control item of the Postural assessment scale ( 以下;PASS-TC),Cognitive-related Behavioral Assessmentの感情項目(以下;CBA感情)とし,リフト機による効果を検証した.結果をA1→B前→B後→A2の順に記載.BLS;17→17→10→10.PASS-TC;0→0→14→14.CBA感情;2→2→4→3と各項目で改善し, 効果の持続を認めた.
重度姿勢定位障害を呈した症例にリフター機を使用した治療介入は, B 期においてBLS, PASS-TC, CBA感情と各項目で改善し,効果の持続も認めた.姿勢定位障害は主観的な垂直判断の偏移にて起こるといわれ(Perennou;2008),認知的側面からの介入が主流であるが,近年では運動異常という概念で捉えた治療介入も報告されている.リフター機を用いた治療介入は運動出力系の改善に寄与し,情報が錯乱・混乱していた前頭連合野が
適切に処理しやすくなったことで姿勢制御及び情動面の改善を認めたと考える.
総合リハビリテーション伊予病院