本稿は聾者であることの具体的で独特のあり方について文化的な視点から見出される、“デフ・コミュニティ”が聾学校に与える影響について整理した。この整理の過程で、全日制高校と聾学校の生徒に、学校・生徒・保護者との関係性や生徒の学習意欲などについてHope Study尺度の調査から、聾学校の生徒は全日制高校の生徒と比較して全項目で満足度が高いことが示され、とりわけ全体の満足度への影響力が大きいホープと関与の2項目に着目した分析を試みた。結果の分析から、第1に聴者から異なって見える“デフ・コミュニティ”の存在は、聾者独自のパーソナリティ、動機づけ、価値観などに関係づけられていること。第2に聾学校において継承されている”デフ・コミュニティ”の存在は、聴覚障害児(者)の行動特性やパーソナリティ形成に対して、聾学校の教育内容よりも本質的な影響を及ぼしていることがわかった。