現代のさまざまな言語教育の教授法には、共通する一つの悪弊が存在する。それは、学習者がすべて、同じように動き、同じように知覚し、同じように認識することができるという前提の上に成り立っているということである 。 「平均的な学習者」のイメージに基づいて設計されてきた従来の言語学習の方法は、学習者それぞれの認知特性や学習スタイル、母語の違い、障害の有無といった多様性を十分に尊重してきたとはいえない。筆者らは、これまで教室の中にインクルードされてこなかった学習者、あるいは教室の中で異質な存在と捉えられがちだった学習者が、 言語学習のさまざまなプロセスのどの段階で、どのような困難を感じ、それにどう対処するかを、広い意味での「言語学習方略」の問題であると考え、彼らを「共同研究者」として、多様な特性をもつ人々の多様なコミュニケーションのあり方を捉え直し、「インクルーシブな言語学習環境設計」に取り組む。本発表では、なぜ「当事者駆動型」を提起するに至ったのか、その経緯と今後の研究課題について論じる。
共同発表者:植村麻紀子・池谷尚美・古屋憲章・山崎直樹