本書は、第一次大戦で五大国の一角を占めるに至った日本が、昭和の大戦における大敗北に至るまでの転落の歴史を、「経済外交」というプリズムを通して世界史的観点から問い直している。それによって、第一次大戦後に再建が試みられた自由貿易体制とそれを支える国際協調体制とが、大恐慌を機に崩壊に向かうなかで、幣原外交に代表される戦間期日本の「国際協調路線」が挫折していく過程を描くことに成功している。しかし、金融政策上の対米英協調路線が日本国内の社会的分断を引き起こした結果、その路線からの離脱を迫る政治勢力が国家運営の主導権を掌握したという内政上の問題点を扱っていない。そのため、「国際協調路線」がなぜ大恐慌を乗り越えられなかったのかという問いに、本書は十分に答えていないと言わざるを得ない。
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