アラスカの先住民社会では、親以外の年長者による若年者への教育(メンターによる教育)が伝統的に行われてきた。その内容は、狩猟漁撈採集活動、野外での生存技術、現地語などで、背景にある伝統的哲学や規律(discipline)の伝授こそが重要であるとされた。本稿では、当該社会において過去に行われたメンター教育の事例を検討して、その伝統的特徴を明らかにするとともに、現在実施されているメンター教育についても報告し、その変容と問題点を検討したうえで、問題を抱える若年者への支援への応用について考察した。
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